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「二人共やめなよ。もうすぐ本番なんだから。結城もそんなんじゃいい声出ないよ?」
怒りのぶつけ所がなくて、握った拳を震わせている俺の手を両手で包むと、和泉は呆れたように言った。
目を閉じ息を吐く。
和泉のおかげで怒りも落ち着いてきた。
「そうね。あなた達の場合、王子様よりお姫様の方が恐いものね。今日のところはやめとくわ」
和泉に宥められる俺をバカにしたように笑って、響は煙草を口にした。
「おい、お前いい加減にしろよ」
その態度があまりにもムカついて、俺は響のくわえていた煙草を取り上げると机の上で揉み消した。
「結城!」
慌てた和泉の声が俺を思い止まらせる。
「本番でーす。お願いしまーす」
その張り詰めた空気を破るかのように、ドアの向こうから俺達を呼ぶ声がした。
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