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「ああ。ここでのお前の世話はこの者がする。用があれば、何でも申し付けるが良い」
「はい」
「エルンストだ。人間だが私の恋人だ。そのつもりで対応しろ」
「はっ」
「ふむ。沐浴して着替えたら、私の所に来なさい」
エリーが、森の王にしがみつく。
「心配しなくて良い。私の一族は、お前を傷付けたりしない。さ、身体を洗って綺麗になっておいで。夕食にしよう」
「………はい」
「さっ。エルンスト様、こちらでございます」
エリーは、キリアンと言う名の若者に案内され、身体を洗って貰い着替えると、改めて森の王の所に連れて行って貰った。
「ふっ。お前達は下がれ」
同室内に居た何人かが出て行き、二人切り。
「美しいな」
「ぇっ? キャ」
エリーが身に纏っているのは妖精達の衣服で、それも、王に準ずる衣装である。森の王には今、恋人もお妃様も居らず、”恋人のつもりで”と言われたので、こう言う事になった。
エリーが、ポッと両頬を染め、恥ずかしそうに俯いた。美しいと言われてこんなにドキドキするなんて…。
「さぁ。近くにおいで」
「殿っ」
「ふふふ」
雨は三日三晩降り続けた。
この間エリーは、森の王の離宮で彼の人と共に過ごし、四日目の朝、雨が上がってから村に帰って行った。森に入った時と同じように、村の少年の形で弓矢を背にしょって。
エリーは、毎日森へ行った。それも、必ず一人で森に行く。愛しいあの人に会いたくて、だからいつも一人。運良く雨が降れば、あの人の腕の中で眠る事も出来る。けれど、毎日会える訳ではない。彼は森の王だから、何日か会えない時もある。それは、仕事で仕方ないとスッパリ諦めた。それでも、森へは一人で向かった。彼が居なくても、彼の匂いのする森へと通う。その分、友達付き合いが悪くなり、悪戯する時間もなくなった。だから、ここのところ、とっても良い子。
子鹿のようにエリーが走る。そしてジャンプ。
「殿っ!」
「おっと」
「はぁはぁはぁはぁはぁっ。お会いしたかった」
「昨日も会ったぞ」
「でも、今日はこれが初めてですっ」
そう言うエリーの唇へキス。
エリーは、会う度に、彼の人に抱いて貰った。
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