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「ええ。覚えておくわ。修業、頑張って下さいね」
リムターの見付けた乙女は、逞しかった。
さて。こちらは馬上の二人。殿は、ネオステを走らせていた。
普段は枝に隠されている道が、緑の妖精王と尊きお方の帰還で、左右に枝が別れ道を作る。そうして、通り過ぎたら再び枝が道を隠した。
森に入ってから、鳥達の唄が大きくなっている。草花も、動物達も、エリーを迎えられた事を喜んでいた。
「わっ。何?」
「喜んでいるんだ。貰っておけ」
「良いの?」
「捨てたいなら止めんよ」
「そんな事、言ってないもん」
エリーがプーッと膨れて殿に返し、次々と頭上から降り注ぐ木の実や花が付いた枝を全部取った。
休む事もなく一気に馬を走らせて、森の奥に在る緑の殿の本宅でもある城に辿り着いた。エリーは、初めて来たところだ。今迄は、仙境の外れ、人間界と近しい離宮で会っていた。だから、びっくりしている。何と壮麗で美しいお城だろう。ま、それも、緑の殿の美しさには叶わなかったが。
まず、エリーを馬上から降ろす。それで安心したのか、緑の妖精王が馬上から倒れ込んで来た。出迎えに出ていたライトアルフ達がびっくりして抱き留める。
「殿っ」「ご心配は要りませんよ。唯、気を失っただけですから」
そう言ってエリーを諭したのが、エリーの世話係のキリアンだった。
「でも………あんなに傷だらけで」
「ああ。あれは、わざとのようですね」
「どういう意味?」
「エルンスト様に世話を焼いて欲しくて、癒してしまわれなかったのだと考えられます。間もなく火の殿もいらして下さいますので心配は要りません」
「わざと? そんな事しなくても何でも言い付けてくれたら良いのに」
「唯単に、口実が欲しかったのだと思われます」
ともあれ、何人かの下僕によって沐浴させて貰い、緑の妖精王はベッドの中へ。
一方のエリーは、一人の従女に手伝って貰って沐浴を済ませ、緑の妖精王が休む彼の人の部屋に案内して貰った。
「三度の食事とお茶の時間以外はお邪魔致しません。心行く迄、ご看病下さい」
「キリアンっ」
キリアンの口上でエリーが真っ赤になった。しかし、キリアンは表情一つ変えない。
「お休みの際は、殿の隣りに潜り込んで下さい。では、ごゆるりと」
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