~緑の章~

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 そのお披露目の宴が終わったのは、真夜中近くだった。  エリーは、一人で睡魔と戦っていた。  幼馴染み達が四人集まれば、お喋りが止まらないのは、人間でも同じだ。そのお喋りが止んだのは、エリーが緑の君の腕に捕まって居眠りを始めてからだった。  緑の妖精王は宴の終了を告げると、ヒョイッとエリーを抱え上げ、三人の妖精王に適当に休むように一言言って、寝室に行ってしまった。 「ベタ惚れやなぁ~」 「リヴッ」  ポソッと呟いたのが、火の妖精王、リーヴ・レットル。窘めたのは、風の妖精王、フレイン・ターナル。水の妖精王、ウォルター・ブルーは、終始エリーを無視し続け、幼馴染み達の戯言等聞かず、一人でさっさと緑の宮での自分の部屋に篭ってしまった。 「アレの人間嫌いに拍車が掛かったな」 「アルが何とかするだろう。さて。僕も休もう」 「あっ、おい。待てよ」  風の殿も火の殿も座を外したから、招待されていたアルフ達も、自分に与えられた部屋に入った。  一足先に寝室に戻って来ていた緑の殿が、スヤスヤと眠る幼い恋人をベッドに横たえると、パチッと目を醒ましてしまった。 「あれ?」 「眠ってて良かったのに」 「アル。宴は?」 「終わらせた」 「ごめんなさい」 「お前が謝る事ではないよ」 「僕、水の殿に何か失礼な事しましたか?」    ・ 「お前が謝る事ではない。トラウマがあってね」 「でもぉ」 「起きたついでだ。寝間着に着替えなさい」 「はーい」  エリーは、緑の殿の言う事を聞いて、寝間着に着替えた。そして、寝る為に長い髪を左側によせ、緩く編んでいる。  緑の殿は、さっさと寝間着に着替えると、とっととベッド潜り込んだ。  そんな殿の後を追うように、エリーもベッドの左側に滑り込んだ。 「疲れたか?」 「少し。経験がないものので」 「そうだな。明日は一日寝てて良いよ」 「え? あっうん」  肩を押さえ込まれ、早速求められた。  その日もエリーの甘い声が明け方迄聞かれ、その内静かな眠りへと就くのであった。  それから一週間。今日より緑の妖精王が、暫くの間、宮殿を空ける。 「お気を付けて行ってらっしゃいませ」 「ん」  大地を蘇らせに行くのだが、それを見送りに来ていたエリーが、少し淋しそうだ。 「直ぐ戻るよ」
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