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「はい」
まず、火の殿が魔王によって踏み荒らされた大地を一ヶ月掛けて浄化の炎で焼き清めた。次いで、水の殿が半月掛けて荒れた大地に河川を作り直した。そして、風の殿が、半月の間に積乱雲を何度も作って河川を氾濫させ、痩せた大地に養分を与えた。最後は、緑の殿の仕事だ。文字通り、緑の復活。広範囲に渡って踏み荒らしてくれたもんだから、いかな緑の殿でも、今日明日中には復活させられない。
解っていても淋しくて、それでも、健気に微笑もうとする幼い恋人がいじらしくて、折角騎乗したのに降りてしまい、エリーの細い身体を一度、強く抱きしめ口付けた。
びっくりして目を見開いたままでそのキスを貰ったエリーが、そっと瞼を落とす。すると、我慢していた涙がエリーの白い頬に跡を残した。その涙を、緑の君が唇で受け取り瞼の上にもキス。そして、再び、馬上の人となった。
緑の殿としても、幼い恋人を残して行くのは辛い。しかし、お役目だから何処かで切らないと旅立てない。なので、緑の殿は、エリーに微笑みを残し、五十名の共を連れて魔王が踏み荒らして行った北の大地に向かった。
殿達が見えなくなる迄、エリーは手を振っていたが、その姿が完全に見えなくなると悲しげに表情を曇らせ俯いた。
「直ぐにお戻りになられますよ」
「え? ん」
心配して声を掛けてくれたのは、エリーの世話係りキリアン。又、殿のお出掛けだからと集まった動物達も、心配そうにエリーを見詰め、身体を擦り寄せては元気を出してと訴えている。
「くすすっ。元気だよ」
エリーは、心配してくれた彼等ににっこり笑って応えると、その場で腰を落とし、慰めようとしてくれた彼等に口付けた。
でも………やっぱり元気がない。
ま、これも、エリーの場合は仕方なかったろう。何しろ、エリーが緑の里に来てから二ヶ月が過ぎていたが、こうやって緑の殿がお出掛けになられた事はなく、緑の殿と離れて居なくてはならないような事は一度もなかったのだ。この二ヶ月、常に一緒だった。それが、いきなり何日も会えない事態になるなんて、エリーは想像もしていなかったろう。
慣れぬ生活に気を使い、だから傍から離さなかったのだが、彼は緑の妖精王。いつ迄も遊んで居られない。それで、今回仕方なく出掛けて行ったのだが、それに際し、殿はエリーにいくつかの事をしてやった。
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