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一つは、動植物達との自由な会話。
エリーは唯の人間だ。唯の人間である以上、魔法や何かは関係ない。しかし、その唯の人間は緑の妖精王の愛人で、時として今回のように一人になってしまう。そこで、少しでも慰めになればと思ってそうしてやった。
ま、元が森の民だから、動物達の言葉は本能的に判っていたようだが、今はもう、ちゃんとした言葉でやり取り出来る。
次に、森の外への自由な出入りを許可した。
幼い恋人は人間である。両親も弟もまだ健在だ。なのに、その全てを恋人から奪う事は出来なかった。
共に在れればそんな必要はあるまいが、一人残されれば、家族も恋しくなろう。緑の里に居るアルフ達は、快くエリーを迎え入れてくれたが、家族として迎えてくれた訳ではない。無論、友人とも違う。王の愛人として迎え入れたのだ。だから、王の愛人として扱われ、言葉を代えると、至れり尽くせりの毎日を送れるのだが、皆、当然と距離を作ってしまう。それでは、淋しがり屋のこの子には辛かろう。彼等に、悪気がないのも併せて知っているから余計に、内に秘めてしょげるに違いない。
それが見えたから、心配した緑の殿が、里帰りを許してやった。戻れば迎えに行くからと付け加え、許可した。
「う~ん…」
エリーは、一ヶ月近くの間、宮殿で過ごした。
本人、何とかして浮上しようと頑張っていたのだが、彼の人のない淋しさを紛らせる術を見付け出せず、部屋からも出ようとしなかった。緑の里に居るライトアルフ達は皆、優しくしてくれるし、大切にもしてくれるのだが、よそよそしくて、何か、その分が余計に悲しく思ってしまう。
ま、彼等は、誠心誠意尽くしてくれているし、悪気がないのも解るけど、解るからこそ文句も付けられないのだが、それでも悲しく思ってしまう自分が許せない。
エリーは、お昼も食べられず、部屋でブスブスと一人で燻り、ベッドの上でゴロゴロしていたのだが、やにわに起き上がり、パフッと枕を投げ付けた。そして、パパパッと着替えてしまった。
エリーが身に纏ったのは、緑の殿が、里帰り用にと贈ってくれた、村の若衆の着物である。布は仙境で織られた、羽のように軽くて鋼より頑丈な代物だったが、色合いもデザインも、村の若衆が着ている物と変わらない。
エリーは、長い髪を一つに束ねると部屋を出た。
「?! エルンスト様」
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