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「ふ~ん。コレは中?」
「うん。お願い」
「どら。よっと。何コレ。ユーラ一人でやったのか?」
「うん。そうだよ。誰も手伝ってくれないし。ま、アテになんかしてないけどさ。ともあれ、ど~ぞ。お菓子作る余裕なくってお茶受けないけど、お茶くらい入れるわよ」
そう言ってエリーを中に促したユーラが、そこに居た一人の魔法使いの姿にどっきりした。
「魔法使いさんっ」
「ぇ? あ、お帰りなさい。お留守だったので、待たせて頂きました」
「あ、お弟子さんか。立ち姿がそっくりだったんでびっくりしちゃった。お弟子さんの方が背が高いのにね。入って入って」
「あ、うん」
エリーを中に通す。
「これは、エレンスト様」
リムターの最後の弟子、赤の谷を継承したクールが、エリーの姿を認識するなり丁寧に頭を下げた。
「こんにちわ」
エリーは恐縮して、ペコッと頭を下げる。
「どうしたのですか? 今日は」
「退屈だったので、遊びに来ちゃいました」
「ああ。緑の君は、今、お留守でしたね」
「知ってるんですか?」
「長の下には通達があります」
「へぇ~」
「ん? その肩のは…。初めまして」
そう言ってクールが頭を下げたのは、エリーの左肩に鎮座していた鷹だった。
「赤の谷を継承致しましたクールと申します」
「誰に挨拶してんのよ。早く座りなさいな」
お茶の用意をしていたユーラが、エリーとクールに声を掛けた。しかし、その直後に鷹が答える。
「初めまして、赤の谷殿」
「えっ? その鷹、喋るのっ」
「………ちょっちょっとねっ」
「少々の事じゃ動じなくなった自分が怖いわ。はい。君にはコレを上げるわね」
テーブルの上にお茶を出し、リーに手渡したのは胡桃。
「よいしょっと。こんなにお客さん来た事ないから嬉しいわ。お茶受けくらい、こしらえておくんだった」
「………ユーラ」
おきゃんな村の娘は、もう、母の表情をしている。
「強くなったね」
「え? くすす。だって私、お母さんだもん」
事もなげにあっさりそう言い切れるのが、母の強さか………。
「………ユーラさん」
「はい? ”さん”なんて要らないわよ」
「………。赤の谷にいらっしゃいませんか? お留守の間少し見せて頂きましたが、この調子じゃ冬を越せませんよ?」
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