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あの方に褒められる分は良いのだ。どころか、とても嬉しいのだが、それ以外の誰かに何か言われると無性に腹が立つ。
猛烈に怒ってエリーはは家に帰り着くと、そのまんまの勢いで喚いた。
「ただいまっ!!」
「エリー。もう直十六歳になるんだから、もそっと落ち着いたらどうなんだ」
「ただいまっつっただけだぞっっ」
「済みませんね。コレ、ご挨拶なさい。アルフレッドさんと言って、行商をしてらっしゃる方だ」
「へっ? アルフ…レッド??」
ギョッとして目を向けると、今夜のお客さんが、父の向かいに座っていた。
「元気だな、坊や」
「あ、どどど…どうも」
「こらっ! 挨拶くらいまともにしろっ」
「うっ」
「エリーっ! 済みませんね」
「いいえ。元気が良くて良いじゃないですか」
「あはは。そう言って頂けると」
エリーは、挨拶もろくに出来ないくらいに狼狽し、父の怒鳴り声すら無視して、二階の自分の部屋に引き篭ってしまった。
茶の髪に深いグリーンアイズ。髪の色も見た感じも全く違うけれど、見間違えるものか。あの旅人は、緑の殿である。一体どうして…?
エリーは、夕食も摂れず、がなり立てる心臓を押さえベッドに突っ伏していた。
「エリー?」
「………。はい」
「気分はどう?」
ドアを叩き入って来たのは、母だった。
彼女は、持って来たお盆をテーブルの上に置くと、エリーの額に手を伸ばした。
「少し、熱っぽいかしらね。今日は暖かくして早く寝なさい」
「うん」
「アレ、お粥よ。食べられそうなら少しでも食べなさいね」
「うん」
「お休み」
母は、頬にキスして出て行った。
「お粥…うっ」
ぐーっと鳴った腹の虫。別に、風邪引いて熱がある訳じゃない。思いもよらぬ人物が居るせいで、興奮しているだけだ。
エリーはゴソゴソとベッドから抜け出すと、持って来てくれたお粥をペロッと平らげてしまった。
「………何なんだろ~」
所在なさ気に部屋をウロ付いているエリーは、客間に居るだろう彼の人の事を想い、殆ど泣いている。
一階の方から聞こえていた物音もしなくなり、シーンと静まり返った頃、ドアを叩く音がした。
「………はっいっ」
心臓の音が、妙に耳に付く。
エリーは、ゴロゴロしていたベッドから這い出すと、そろっとドアを開けた。
「あっ」
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