245人が本棚に入れています
本棚に追加
と、同じくあたふたしていたキリアンが、鷹に化けていたのにアルフの姿に戻ってしまった。
「エルンスト様。何がそんなに悲しいのですかっ」
そう言ったキリアンも目を潤ませていたりするのだが、これは、ライトアルフである彼だからこその現象だ。ライトアルフである身には、エリーの素直さ故の悲しみが、思いっ切り感じられてしまう。
「エルンスト様。そんなに泣かないで下さいっ。私も悲しくなってしまいます。くっすん」
”何一緒に泣いてんだよ。エルンスト様、エルンスト様?”
「ムカッ。お前に何が解るっ。栗鼠の分際で」
”煩いやいっ。人の指定席を横取りしといて態度デカイんだから”
「何だとっ」
”何だよっ”
「………ぐすっ」
「はっ! エルンスト様っっ。そんな改めて泣かなくってもっっ。この娘の事なら大丈夫ですよ。風となった前の赤の谷殿が、相当強い想いを残しているので、何があろうとも決して不幸にはなりませんっ。エルンスト様ぁ」
ライトアルフが狼狽する・の図。
「えっえっ、今のっ、絶対っ」
「はい。ライトアルフは嘘を吐けません。絶対です」
「ひっくえっくはーっ」
エリーが、盛大に零した涙を自分で拭い取り、大きく息を吐いた。
「ほ~っっ。大丈夫ですか?」
「うん。何か、グサッと来ちゃったよ。しくしく、ぐすぐす」
「ぜ~っっ」
「ぐすぐす。ねぇキリアン」
「はい。何でしょう」
「どうしてキリアンも一緒に泣いてくれた訳?」
「どうし………。それは、私が人間ではなくライトアルフだったからです」
「………。解らな~い」
「殿がお戻りになられましたら、お尋ね下さい。これは、私でなくとも同じです。殿とて、例外ではありません。尤も、あの方は、我々のように一緒に泣く事はありませんが、同じ胸の痛みを感じていましょう」
「解らないぃっっ」
「殿に、根掘り葉掘り問い詰めて下さい。んっ? 誰か来る」
言い終わる頃にはキリアンは鷹に姿を変えてしまった。
「便利だなぁ~」
鷹に戻ったキリアンが左肩に落ち着き、エリーがしみじみぼやいたら、本当にドアを叩かれた。
「……あっ。はいっ!」
目の前で展開されていた事に乗り損ねたユーラが、はっとして出て行った。
それは、大霊祭が始まるからいらっしゃいよと言う、村長の奥さんのお誘いだった。
最初のコメントを投稿しよう!