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「はい。伺います。あっ、奥さん」
「なぁに?」
「今、エリーが来てるんですよ」
「え”」
「エリー、お母さんだよぉ」
「は? あ、母さん」
玄関先に背を向けていた事と、半身を乗り出しての会話だったから、エリーの耳には外に居る母の声なんて聞こえない。だから、ユーラに促され振り返った。
「………エリー。どうしたの。何かやって追い出されちゃったのっ? 全くこの子は、本当にもうっ、落ち着きがないんだからぁっっ」
「………あのねっ」
「だから、あれだけ言ったのにっ」
何かとんでもないヘマをやらかして追い出されたんだ、と早合点してくれた母は、エリーの身体をひしと抱きしめ、おいおい泣き始めた。
「ちょっと、母さん」
「おーいおいおい」
「別に追い出された訳じゃねぇ! 今、お出掛けしてて、ちょっと暇こいてたから遊びに来ただけだっ!」
「………そうなの?」
「そう。向こうでは上手くやってるよ」
「あらやだ。それならそうと、はじめからそう言いなさいよ。母さん、心配しちゃったじゃないの。お前、落ち着きがないんだから、何か大切な物でも壊して追い出されたのかと思ったじゃない」
「言うも何も、人の顔見るなり泣き出したのは母さんじゃないかっ」
「お前が悪いんでしょう? いきなり居るんだもの」
「はいはい。私が悪うございました」
「あらっ! リーちゃん」
母の興味が、テーブルの上に鎮座して胡桃を食べていたリーに変わる。
「お久しぶりね。この鷹さんもお友達なの?」
「へっ? あっ。まぁ」
「そう。ま、良いわ。お前もいらっしゃい。あ、そうそう。ユーラは暖かくして来るのよ」
おいおい泣いていた母は、ピタッと泣き止むと、ケロッとしてそう言い残し去って行った。
エリーがそんな母を見送りガーックリとエリーが肩を落とす。
「………色んな意味で、やっぱり母さんは無敵だと思う」
「この一ヶ月くらいだよ」
「何が」
「元気になったのが。エリーが居なくなっちゃってしょげてたんだよ。村長もね。ジョーが一人で頑張ってたんだから」
「ふ、ふ~ん。ジョーがね…想像付くけど」
「くすす。さぁて、行こうかな。お弟子さんもいかが?」
「クールですよ。奥さん」
「え? やぁだぁ」
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