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奥さんなる言葉が嬉しかったのか、ユーラは真っ赤になってクールの背中をベチッと殴り付けてしまった。
「あ。リムターの奥さん」
「えっ? はいっ。あっ、鷹さん」
不意に掛けられた馴染みのない声に、ユーラは辺りをキョロキョロと見回した。で、今の声がエリーの左肩に鎮座している鷹だと気付き、マジーっと鷹を見詰める。
「私の事は黙っていて下さい」
「ええ。解ってるわ。くすす。一~二年前の私なら、きっと大パニックしてたんだろうにね。さっ、行こう」
「え? うん」
テーブルの上に鎮座していたリーを、両手で優しく抱き上げると、エリーは自分の右肩に座らせた。
「この子のお陰なのかなぁ。ホントに動じないの。だから何よ、みたいでね。ふっと思っちゃうわ。嗚呼。何て母親してんだろう。うるうるって」
「くすすっ。何か、解る気する」
揃って家を出て、大霊祭の行われる段の側に向かった。
凄い人混みだ。これからもっと人が流れ込んで来る。
そんな、見物に来た旅人や招待を受けて足を運んだ他国のお偉いさんには関係ないが、この国の人間達にとってはこの大霊祭がメインであって、その後の後夜祭は唯のおまけだ。
大戦後、初の大霊祭。収穫の感謝ではなく、大戦終結のお礼である。
厳かにつづがなく執り行われ、お客さんと子供達お待ちかねの後夜祭となった。露店も出ているし、吟遊詩人も何十人とやって来ている。
エリーは、その間で家族に会いに行った。ユーラは、クールと一緒に居るから大丈夫だ。
二ヶ月振りの再会。素直に喜んでくれたのは弟のジョーで、心配性の父は、母に話を聞いていただろうに、改めて念を押された。
「………信用ないもんなぁ~」
「お兄ちゃんの場合は、今迄の行いだろ?」
「ジョーっ!!」
レイク村村長の長子が、ポロセイト王国が国教として奉っている森の神の寵愛を受け、人間界で祝言を上げた事は、この村も闇の王が攻めて来た時に居た者と、後は、国王と第一王子しか知らない。めでたい話だし、自慢に思っても良い事だが、下手に喋って森の神の怒りに触れたくないと、誰も他言しなかった。
父母との再会。弟と、幼馴染み達とのじゃれっこ。
緑の里での生活に不満はないが、ホッとした。緑の宮に居るアルフ達も聖なる森に居る動植物もとても良くしてくれるが、溜め息を零してしまった。
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