~緑の章~

135/163
前へ
/166ページ
次へ
 こんなに混んでいたんじゃ、踏み潰されてしまう。エリーは身を屈めリーの名前を呼び続けた。 「リー? リー!」  と、………。 ”エルンスト様ぁ” 「あっ。リー! 良かった。怪我はないか?」 ”はい。でも、怖かった。ふぇ” 「あ~よしよし」  足元から届いた声に安心して、両手で抱え上げ、右肩に座らせる。 「そんな栗鼠と怪我させられた俺とでは、どっちが大切なんだよっ!」 「決まってんじゃん。そんな栗鼠の方だよ。ついでに言うと、恥知らずなあんたより、左肩の鷹の方が大切だから。さよなら」 「待てよ!」 「離せ! お前に触られたところから腐ってく!」 「怪我させられた分のお返しを貰わないとな。こっち来い!」 「離せっ! 離しやがれっ!」  小柄なエリーがどんなに抗っても、カールの力の方が強く、ズルズルと引きずられて行く。  これに痺れを切らしたキリアンが、カールの目玉を鋭いくちばしで突々き、えぐり取ってしまった。 「ギャーっ!」  カールの右顔面が血で染まって行く。  そんなの無視してクルリと背を向けたら肩が当たり、とっさに謝罪の言葉がエリーの唇から出ていた。 「済みません」 「済まさねぇよ」 「ムッ」 「この村では、遠路遥々来た客人にこんな持て成しをするのか」  エリーの肩が当たった腕を摩り、痛い痛いと繰り返している。  誰様のご家来衆か知らないが、痛いと喚いている大柄な騎士と、それの連れらしい、やはり大柄な騎士が二人、計三人の騎士がエリーを取り囲んでいた。こいつ等、酔ってる。酔っ払い相手にたんか切る程馬鹿じゃない。とっとと行こう。 「待てよ~」 「ムカッ。離して下さいっ!」 「元気の良いお嬢ちゃんだ」 「テメェ~っ! 目、腐ってんのかっ! 誰が嬢ちゃんだっ! 寝言は寝てる時に言えっっ!!」  ブチッと切れたエリーが、そのようにがなり付けていた。 「ふーん。ボーヤか」 「まっ。どっちでも良いさ」 「良い子良い子してやるから、おじさん達と一緒においで。怪我人の手当をして貰わなきゃなぁ」 「ざけんなっ!!」 「おっと。甘いな」  ヌーッと醜い顔を近付けて来たそいつの横っ面を、身体を引き加減で殴ろうとした。が、ぶつ事は出来ず、代わって、右手首を掴まれてしまった。  そこに、カールが切り掛かって来た。
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

245人が本棚に入れています
本棚に追加