245人が本棚に入れています
本棚に追加
こんなに混んでいたんじゃ、踏み潰されてしまう。エリーは身を屈めリーの名前を呼び続けた。
「リー? リー!」
と、………。
”エルンスト様ぁ”
「あっ。リー! 良かった。怪我はないか?」
”はい。でも、怖かった。ふぇ”
「あ~よしよし」
足元から届いた声に安心して、両手で抱え上げ、右肩に座らせる。
「そんな栗鼠と怪我させられた俺とでは、どっちが大切なんだよっ!」
「決まってんじゃん。そんな栗鼠の方だよ。ついでに言うと、恥知らずなあんたより、左肩の鷹の方が大切だから。さよなら」
「待てよ!」
「離せ! お前に触られたところから腐ってく!」
「怪我させられた分のお返しを貰わないとな。こっち来い!」
「離せっ! 離しやがれっ!」
小柄なエリーがどんなに抗っても、カールの力の方が強く、ズルズルと引きずられて行く。
これに痺れを切らしたキリアンが、カールの目玉を鋭いくちばしで突々き、えぐり取ってしまった。
「ギャーっ!」
カールの右顔面が血で染まって行く。
そんなの無視してクルリと背を向けたら肩が当たり、とっさに謝罪の言葉がエリーの唇から出ていた。
「済みません」
「済まさねぇよ」
「ムッ」
「この村では、遠路遥々来た客人にこんな持て成しをするのか」
エリーの肩が当たった腕を摩り、痛い痛いと繰り返している。
誰様のご家来衆か知らないが、痛いと喚いている大柄な騎士と、それの連れらしい、やはり大柄な騎士が二人、計三人の騎士がエリーを取り囲んでいた。こいつ等、酔ってる。酔っ払い相手にたんか切る程馬鹿じゃない。とっとと行こう。
「待てよ~」
「ムカッ。離して下さいっ!」
「元気の良いお嬢ちゃんだ」
「テメェ~っ! 目、腐ってんのかっ! 誰が嬢ちゃんだっ! 寝言は寝てる時に言えっっ!!」
ブチッと切れたエリーが、そのようにがなり付けていた。
「ふーん。ボーヤか」
「まっ。どっちでも良いさ」
「良い子良い子してやるから、おじさん達と一緒においで。怪我人の手当をして貰わなきゃなぁ」
「ざけんなっ!!」
「おっと。甘いな」
ヌーッと醜い顔を近付けて来たそいつの横っ面を、身体を引き加減で殴ろうとした。が、ぶつ事は出来ず、代わって、右手首を掴まれてしまった。
そこに、カールが切り掛かって来た。
最初のコメントを投稿しよう!