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「エリーに手を出すなっ! こいつは俺のもんだっ! 目を潰されたお礼として、一生尽くして貰うっ!」
そう喚きながら、剣をブンブン振り回している。が、ヘラヘラ笑って聞いていた三人の中の一人が足を出した。その足に蹴つまずいて、カールは転んでしまった。そして、剣を持っていた方の右手を踏み付けにし、拳を砕いた。
「ギャーッ! 俺の手が、俺の手が」
「身の程を知れ。小僧」
「さ、行こうか、ボーヤ」
余りの無礼さにキリアンもトサカに来ていて、エリーの、華奢な右手首を掴む男に向けて、鋭いくちばしを向けたが、途中で止めた。と、同時に後方から逞しい腕が伸びて来て、エリーの右手首を掴んでいる男の左手首を加減せずに握りしめた。すると、鈍い音がして、男の手はエリーから離れる。そして、三人纏めて転がしてしまった。
それはあっと言う間の出来事で、びっくりしてしまったエリーが、手の伸びて来たそこを見る。
「ぁっ! アルっ」
エリーの顔にそれは嬉しそうな笑みが浮かび、会いたくてたまらなかった緑の殿に飛び付いた。
「おっと」
「いつお戻りに?」
「少し前だ」
「お帰りなさい。ん~」
「それは何の真似だ?」
ちゃんと顔を上げ、お帰りを言ったエリーが、改めて緑の殿の胸に顔を埋めコスコスと鼻を擦り付ける。
「………アルの匂い」
「くっくっくっ。又、可愛い事を」
「笑う事ないのに」
「ふふふ。じゃあ、お前の匂いだ」
「ぇ? ぁっ…ぅっん」
くっと顎を持ち上げられ、唇にキス。
エリーは、緑の君の太い首に華奢な両腕を巻き付け、それに応える。
そんな二人に、緑の殿に転がされた騎士三人が絡んで来た。
「お前っ! 何処の者だっ!」
「ふざけた真似をしおってっ!」
「唯で済むと思うなよっ!」
三人が三人共剣を抜き、事もあろうか緑の殿に刃を向けてしまった。
「………。何て無礼な人間共だっっ」
「おっ?」
低い声でボソーッと唸ったのはキリアンだ。緑の君は、目の前の人間三人にではなく、キリアンの今の台詞にびっくりした。
「お前、そんなに堪えていたのか」
「余りの健気さに涙汲む程です」
「ま、怪我させない程度に遊んでやれ」
「え~っっ。コテンパンに」
「怪我をさせない程度」
「はーい」
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