~緑の章~

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 大泣きを始めたエリーは、物言わぬ老木の痛みが辛くて大号泣。 「泣かずとも良い」 「えっくえっく」  いきなりフサッと頭を撫でられ、びっくりして振り向けば、見た事のない綺麗なお兄さんが立っていた。 「泣かずとも良い。お前がわざとやったのではない事は、こやつもちゃんと心得ている」 「えっえっ。でもっでもっ、うっ、ふぇ~んっ。痛いよぉっ、こんなにえぐれちゃってるんだもぉんっっ、あ~んっっ。ごめんねっごめんねっ」  見ず知らずの綺麗なお兄さんにしがみつき大号泣。 「くっくっくっ。お前は優しい人間だな」 「えっくえっく」 「ほら、見てご覧」 「えっえっ。ひっく?」  綺麗なお兄さんに促され、エリーの水浸しの目が、自分が傷付けた所を見遣る。 「あっ」  彼の手が、老木のえぐれた所をそっと摩ると、傷がなくなった。 「これでもう、お前が泣く必要はないな」 「えっ? あっ。治ったの?」 「ああ。手を」  エリーの小さな手を掴み、老木に触れさせた。 「何?」 「目を閉じて聞いてご覧」 「? 何?」 「聞こえるだろう?」 「えっ?」 ”泣くのはお止し、小さな狩人。私は平気だ。緑の王がおられる限り、心配はない。泣くのはお止し。心優しい人間の子” 「なっ、何っ? 今の何っ」 「こいつの声」 「ぇっ? この木?」 「ああ」 「もっ、痛くないんだね?」 「ああ」 「ほぉ。良かったぁっ。有り難う、お兄さん」 「ん? はっはっはっ。愉快な事を言う」 「何? 変な事言った? あのっ」 「お前、名は何と言う」 「エルンスト・カーライル。皆、エリーって呼ぶけど」 「エリーか。そなたは優しい人間だな」 「え?」 「木の為に泣き喚く人間等、私は、今の今迄、見た事も聞いた事もなかったぞ」 「お兄さん、何処の人? 旅人なら荷物がないし、剣を腰に下げているから騎士様? だとしても不自然。森の中を巡回なんてしないし」  エリーが、悩みまくっている。 「知りたいか」 「うん。あっ、いやっ。はい」 「本当に知りたいのか」 「知りたい」 「ならば、教えなくもないが、他言は相成らんぞ」 「うん! じゃない、はい!」 「裸になれ」 「ぇっ」 「そなたの身体に教えてやろう」 「?? 身体に?」 「そうだ」
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