245人が本棚に入れています
本棚に追加
大泣きを始めたエリーは、物言わぬ老木の痛みが辛くて大号泣。
「泣かずとも良い」
「えっくえっく」
いきなりフサッと頭を撫でられ、びっくりして振り向けば、見た事のない綺麗なお兄さんが立っていた。
「泣かずとも良い。お前がわざとやったのではない事は、こやつもちゃんと心得ている」
「えっえっ。でもっでもっ、うっ、ふぇ~んっ。痛いよぉっ、こんなにえぐれちゃってるんだもぉんっっ、あ~んっっ。ごめんねっごめんねっ」
見ず知らずの綺麗なお兄さんにしがみつき大号泣。
「くっくっくっ。お前は優しい人間だな」
「えっくえっく」
「ほら、見てご覧」
「えっえっ。ひっく?」
綺麗なお兄さんに促され、エリーの水浸しの目が、自分が傷付けた所を見遣る。
「あっ」
彼の手が、老木のえぐれた所をそっと摩ると、傷がなくなった。
「これでもう、お前が泣く必要はないな」
「えっ? あっ。治ったの?」
「ああ。手を」
エリーの小さな手を掴み、老木に触れさせた。
「何?」
「目を閉じて聞いてご覧」
「? 何?」
「聞こえるだろう?」
「えっ?」
”泣くのはお止し、小さな狩人。私は平気だ。緑の王がおられる限り、心配はない。泣くのはお止し。心優しい人間の子”
「なっ、何っ? 今の何っ」
「こいつの声」
「ぇっ? この木?」
「ああ」
「もっ、痛くないんだね?」
「ああ」
「ほぉ。良かったぁっ。有り難う、お兄さん」
「ん? はっはっはっ。愉快な事を言う」
「何? 変な事言った? あのっ」
「お前、名は何と言う」
「エルンスト・カーライル。皆、エリーって呼ぶけど」
「エリーか。そなたは優しい人間だな」
「え?」
「木の為に泣き喚く人間等、私は、今の今迄、見た事も聞いた事もなかったぞ」
「お兄さん、何処の人? 旅人なら荷物がないし、剣を腰に下げているから騎士様? だとしても不自然。森の中を巡回なんてしないし」
エリーが、悩みまくっている。
「知りたいか」
「うん。あっ、いやっ。はい」
「本当に知りたいのか」
「知りたい」
「ならば、教えなくもないが、他言は相成らんぞ」
「うん! じゃない、はい!」
「裸になれ」
「ぇっ」
「そなたの身体に教えてやろう」
「?? 身体に?」
「そうだ」
最初のコメントを投稿しよう!