~緑の章~

6/163
前へ
/166ページ
次へ
 今一良く判らなかったが好奇心には勝てず、何より、このお兄さんの事を良く知りたかった。  陽の光りで紡がれた贅沢な黄金の長い髪。エリーとは対象的なクルクル巻き毛。その一房一房が、まばゆく光り輝いて、深い深い森を連想させるグリーンアイズ。彫の深い端正なマスクに逞しい体躯。  見た感じだと、幼馴染みの一人の一番上のお兄ちゃんと同じくらいなのに、どうしてだか最長老様より重厚感あるし、がっしりとした逞しい大きな身体の割りに、受ける印象は上品な優しさと気品に満ち溢れた優雅さで、腕力云々とは全くちがう力強さも感じる。  とても静かで、とても深くて、そして、優しくて、とても広い。  エリーは、躊躇すらせずに、全裸になってしまった。 「これで良いの?」 「ああ。美しいな、そなたは」 「ぇ? あのっっ」  一番嫌いな言葉。なのに、腹が立つどころか、顔が熱くなり目を伏せた。トクントクンと心臓が駆け出し、息苦しくなった。表面的な事じゃないと気付いたから…。  頬を染め、顔を伏せてしまったエリーの顎に若者の指が掛かった。クイッと持ち上げ、残っている方の手でエリーの薄い筋肉で包まれている身体に触れる。  首から優しい肩に、薄っぺらな少年の胸を撫で摩り、更に下へと…。 「怖くはないのか?」 「え?」  震えてすらいないエリーに、若者が尋ねる。  けれど、エリーは何を言わんとしているのか解らなかった。だから、小首を傾げ若者を見る。  若者は、もう一度、尋ねてみた。 「怖くはないのか」 「………? 何が?」 「私がだ」 「………?? どうして??」  純粋に尋ね返され、若者の方が困ってしまった。素直に裸になってしまった事にも驚いたが、それ以上に、今、向けてくれている視線にびっくりしている。 「ねぇ、どうして?」 「どうしてって」 「ねぇ、どうして」 「では、質問を改める。何故、怖くない」 「何故? 何故………う~ん。だってお兄さん、こいつの怪我を治してくれたよ?」 「………」 「悪い人の訳がない。それに………森と同じ色の目してるもん」  ニコッと笑って断言。 「これは参ったな」 ”森の王が、困っておられる” ”森の王が、圧倒されている” ”森の王が、人間の子供にやり込められた” 「煩い。黙れ」 「え?」 「いや」
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

245人が本棚に入れています
本棚に追加