~緑の章~

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「あっあぁ」 「気持ち良かろう?」 「うんっ。きもっちっいいっ」  甘い甘い吐息を零すエリーは、若者にしがみつき、自分でも、上体を揺すっていた。  今のエリーは、若者の虜であった。なすがまま、言うがままに若者に尽くしている。  快楽の為の交わりが二度続いた。  若者に心を奪われ、最高の快楽を教え込まれてから愛を育む。 「んっんっ。お兄さっ、森の王っ?」 「ああ」 「んっ、だっからっ、木っ、治った? んっんっ」 「そうだ」 「あんっ。ごめっなさっ」 「ん?」  突かれながら、言葉に乗せず魂に刻み込まれた若者の身分。彼は、自分の村で崇め奉っている森の神で四大妖精の王・アルフレッド・リーンレイクであった。  エリーは、足を彼の人の腰に絡み付かせ、真実を心で知るなりうるっと涙汲んだ。  森の王が、少年を突くのを止める。 「どうして泣く」 「っくっく。僕、貴方の森の住人を傷付けてしまいました。ぇっぇっ」 「もう忘れろ。わざとやった訳ではあるまい? 大事にもにもならなかったのだ」 「えっえっ。ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」  心優しい少年は、素直に若者を受け入れ愛し始めてしまったから、その優しさ故に涙した。 「何とした事か。泣くな」 「えっえっ。ごめっなさっ」 「泣くでない。許すから」 「ひっくえっく。許しってっ?」 「ああ。許す。だから、泣くな」 「森の王っっ」 「ふふふ。お前は優しい子だな。何と愛しい子だろうか。もう泣くでない。愛しているよ」 「森の王。僕もっ、僕もっ、僕もっ」  両腕を伸ばし、きつく森の王にしがみつく。 「ふふふ」 「僕も、愛しています」 「ああ」  うっとりと見詰めそう言ったエリーに口付け、再びその細い身体を揺すり始めた。  それが終わり、森の王が衣服を身に付ける。エリーは、それを、何処かぼんやりとして見ていた。  エリーの下半身はベタベタだ。けれど、気にも止めず愛しい人の胸に身を預け、静かに瞼を閉じている。  森の王の整った指先が、エリーの金糸を優しく梳いていた。  エリーは時折り森の王を見上げ、甘えたように見詰める。すると、森の王が口付けてくれて、又、その逞しい胸にコロッと縋り付いた。  少女のように美しい少年は、森の王の女となった。 「あ、雨だ」
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