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そのやたらに通る、響く声につられ、陸とタケシは振り向いた。
その先に、漆黒の長い長い黒髪を腰の下まで垂らし、この世のものとは思えない程の白い肌、意志の強そうな瞳を宿した女が立っていた。
美人なのだが、なぜか近寄りがたく、何人をも寄せ付けない――そんな雰囲気をもった女だった。
「あなたたち、オカルトに興味はないかしら?」
赤貝のような赤く美しい色、形のよい唇が音を紡ぎ出す。
タケシはたちどころにその女の美しさに目を奪われた。
「ねぇ、君きれいだね。名前は?オカルトのサークルでもやってるの?」
「……私?
私は犬神 さやか。
オカルト愛好会の会長をやらせていただいているわ」
その女は、片手で長い髪を掻き上げ、にこりと笑い、タケシの質問に答えた。
(……オカルト、ね)
陸はさやかをじっと見た。
人外の美しさと類稀なる気品を持ち合わせたさやかが『オカルト』だと聞くと、なぜか妙に納得してしまった。
「私達はこの界隈の超異常現象についての研究をしているの……例えばそうね」
タケシに話し掛けているはずのさやかの目線が、突然陸に向けられる。
視線が合ったことにドキッとさせられる陸。
さやかは続けた―――。
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