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いくら科学が進歩したと言っても、さすがに十階まで上がるにはエレベーターでもすぐではない。
エレベーターに乗り込んで少しの安心感を感じていた俺だが、悪寒がまだ治まらない。
それどころか型無き悪意はどんどん濃くなってきている気さえもする。
やはり原因はエレベーターだったか、と己の浅はかさを呪ったが既に後の祭。
もう四階だしいいや、と思い直したがどうも落ち着かない。
このまま何も起こらないに越した事はないが、しかし悪寒はあり「何か」あるはずなのに、その「何か」が見渡しても見えないとなれば余計気持ち悪い。
数秒後、異変に気が付いた俺は同時にエレベーターを六階にも関わらず止め、逃げる様に降りた。
エレベーターの、下にひいているマットが何か黒っぽい液体が染み込んでいたのだった。
俺が踏んでいた場所を中心に円になって。
部屋まで階段で上がり、扉を閉める頃には何もかも普通通りに戻っていた。
次の日にはマットは取り除かれていたが、その事についての説明は無かった。
友人に「作り話だろ?マット敷かれてたぞ」と言われたが、彼は以前赤かったマットが緑色に変わっている事に気が付いているのだろうか。
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