ドッペルゲンガー

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それに走ってくるヤツは当時の自分とは違う服だったしな。 そいつの顔が見え始めた時、一瞬「俺と似てるな」とは思った。だが遠目に見て似ている等というのは良くある話だ。 が、近づいてくるに従いだんだん気持ち悪くなってきた。よく似すぎている。 そいつが俺とすれ違う頃には、俺の足は完全に止まっていた。嫌な汗が身体中を伝う。 自分でいうのも何だが俺の顔は特徴が有るので、見紛うなんて事は無い。まして毎日見ている自分の顔だ。 「そっくり」どころでなく、「同じ」にしか見えなかった。 急に周りの人間も含め、その場に居るのが怖くなり両親の元へ這々の体で逃げ帰ったのだが、あれ程両親と話す事で安堵を得られた事は無い。 結局あいつは俺に一瞥もせず去っていった。振り返りそいつの行き先を確認出来る程の勇気は当時に無かった。 そして、数年経った今、俺は特に重病もなく、健やかに毎日を送っている。 現実の話なんてこんなもんか。もう一度会いたいのだが出てきてくれんし。 ただ、俺がたまたまかかった医者に軽度の心臓病である、と診断されたのはその時分ではなかったかな…と思うのだ。
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