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「大丈夫ですか……?」
その言葉でルシフェルは目が覚めた。
見ると目の前には美しい女の子がいて、心配そうな顔をして自分の顔を覗きこんでいる。
思わず反射的に持っていたナギナタの形になった杖を向けた。
それでも女の子は怯まず、
「怯えなくても大丈夫です。私は貴方の敵じゃありません」
と言って手を差し伸べた。
ルシフェルは女の子の真剣な眼差しを信じ、杖を引き、女の子の手をとって立ち上がった。
ふと、自分が怪我をしていたことに気がついて、体のあちこちを触ってみたがなんともない。
先ほどの戦闘で破けたローブもきっちり治っていた。
「あ、俺……怪我を──」
「あぁ、それなら私が治させてもらいました」
くしゃっとした笑顔で微笑む少女。
「そうなのか……!ありがとう。優しい女の子だねき──」
ルシフェルはそこまで言って言葉を失った。
なんとその女の子は、Aランクの依頼のはずの、ワイルドファングを引きずっていたからだ。
「き、君は一体!?」
ルシフェルは半笑いをしながら尋ねた。
「私ですか?私は、テュール・ベルガント。王都ジスブルクの出身です」
木々の間から見えるジスブルクの城壁を指さしてテュールは言った。
もう森の出口は近いのか、その城壁はとても大きく見えた。
「そっか。改めてお礼を言うよ、ありがとうテュール。俺はルシフェル・ワールデントだ」
「いえ、困ってる時はお互い様ですよ。ルシフェルさん」
がっしりと笑顔で握手を交わすルシフェルとテュール。
「今日は王都から討伐でこの森に来てて、それで帰ろうとしたらあなたが……。ホント、びっくりしました。あんな傷だらけで、何があったんですか?」
心配そうな目で問いかけるテュール。
「はは、ちょっとね……」
苦笑いで答えを渋るルシフェル。
するとテュールが、
「ちょっと、じゃないです!あんな傷、モンスター相手じゃないですよね?教えて下さい、何があったんですか?」
そう自分に迫る彼女。
その真っ直ぐな目を見たら、もう話さない訳にはいかない。
ルシフェルはそんな気さえしていた。
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