3人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
ここは王都ジスブルクの郊外、ウェルダム村。
郊外といっても、人の出入りは少ないわけではない。
この村の周辺は温暖な気候なため、夏は暑さを逃れ、冬は寒さを逃れるのにはちょうどいい地域だからだ。
今の季節は夏。
例年通り、ここを避暑地として利用する者は多い。
そんな村の入口に、季節外れの黒いローブをまとった少年が一人。
温暖な気候とは言っても、こんな服装では風通しが悪すぎる。
暑くないはずがない。
予想通り、その少年の顎からは頬を伝った汗が滴り、見てるこちらが暑くなるほどだ。
「あぢぃ……」
暑さのせいか、背はぐだっとだらしなく曲がり、足元はふらついている。
そんなふらついた足取りで、その少年はある建物の前で止まった。
「ここか……」
吊るしてある看板には、『討伐依頼屋』と書いてある。
この世界には、一部の野生動植物がなんらかの影響で凶暴化した、いわゆるモンスターが至るところにいる。
彼らを放っておくと、人に危害を加えるだけでなく、周辺の生態系を壊しかねない。
それを未然に防ぐために、モンスターの発見情報、及び討伐依頼は各地の王都に集められる。
そこからさらに、その情報は発見現場から近い村々に送られる。
その送られた依頼は、この『討伐依頼屋』に再び集められ、腕に自信のある者が自由に依頼を選択し、解決する。
解決したあかつきには、そのランクに応じた報酬が王都から送られる。
普通の仕事よりも明らかに手っ取り早く、かつ収入がよい。
そんな店に来るのだから、彼もきっとお金に困っているのだろう。
店の扉をゆっくりと開けると、体つきの良い店長の威勢の良い声が辺りに響く。
彼はカウンターにいる店長に向かって、
「Dランクの依頼、ありますか……?」
弱々しい声で言った。
それを聞いた店長が、これまた威勢の良い声で返事をすると、後ろのコルク板に貼られた依頼書を一枚一枚見ていった。
「これなんかどうだい?」
その中から一枚取りだし、手で顔をぱたぱた扇いでいるカウンター前の少年に見せた。
最初のコメントを投稿しよう!