出会い

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  ここは王都ジスブルクの郊外、ウェルダム村。 郊外といっても、人の出入りは少ないわけではない。 この村の周辺は温暖な気候なため、夏は暑さを逃れ、冬は寒さを逃れるのにはちょうどいい地域だからだ。 今の季節は夏。 例年通り、ここを避暑地として利用する者は多い。 そんな村の入口に、季節外れの黒いローブをまとった少年が一人。 温暖な気候とは言っても、こんな服装では風通しが悪すぎる。 暑くないはずがない。 予想通り、その少年の顎からは頬を伝った汗が滴り、見てるこちらが暑くなるほどだ。 「あぢぃ……」 暑さのせいか、背はぐだっとだらしなく曲がり、足元はふらついている。 そんなふらついた足取りで、その少年はある建物の前で止まった。 「ここか……」 吊るしてある看板には、『討伐依頼屋』と書いてある。 この世界には、一部の野生動植物がなんらかの影響で凶暴化した、いわゆるモンスターが至るところにいる。 彼らを放っておくと、人に危害を加えるだけでなく、周辺の生態系を壊しかねない。 それを未然に防ぐために、モンスターの発見情報、及び討伐依頼は各地の王都に集められる。 そこからさらに、その情報は発見現場から近い村々に送られる。 その送られた依頼は、この『討伐依頼屋』に再び集められ、腕に自信のある者が自由に依頼を選択し、解決する。 解決したあかつきには、そのランクに応じた報酬が王都から送られる。 普通の仕事よりも明らかに手っ取り早く、かつ収入がよい。 そんな店に来るのだから、彼もきっとお金に困っているのだろう。 店の扉をゆっくりと開けると、体つきの良い店長の威勢の良い声が辺りに響く。 彼はカウンターにいる店長に向かって、 「Dランクの依頼、ありますか……?」 弱々しい声で言った。 それを聞いた店長が、これまた威勢の良い声で返事をすると、後ろのコルク板に貼られた依頼書を一枚一枚見ていった。 「これなんかどうだい?」 その中から一枚取りだし、手で顔をぱたぱた扇いでいるカウンター前の少年に見せた。
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