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「マッドベア、受けます……」
それを聞くと、店長がペンを差し出し、
「そこに名前書いてくれ」
カウンターに置かれたその紙を指さして言った。
少年はそれに従い、
「ルシフェル・ワールデント」
と紙に書いて、店長に渡した。
「はいよ、ルシフェルさんね。確かに承りましたっと」
店長がその紙にサインを書くと、またコルク板に紙を貼り戻した。
それを確認したルシフェルは、くるっと振り返り、正面の出口に向かって歩き出した。
すると、
「あんた、武器持ってないじゃないか。討伐をするんだったら何でもいいから武器を買った方がいい」
カウンターの店長はルシフェルを見て言った。
「あ、はい。ありがとうございます……」
終始暑さで元気のないルシフェルは、出口の前で会釈をして店を出た。
「…武器も…買わないと…」
そう言って、すぐ近くの武器屋にまた入っていった。
武器屋には剣、斧、槍、銃といった様々な武器が置かれていた。
それらを見つめるルシフェル。
「……足りない」
不意にポケットから小銭を取り出すと、そうつぶやいた。
彼の手には、なけなしの金。
ルシフェルはそれを見ながらため息をつく。
ふと、彼の目に止まったのは中古品売り場にあった一本の杖。
「なんだこれ、武器か……?」
何やら他の物とは違う雰囲気が出ている。
杖なのだが、デザインがあまりにも常軌を逸している。とがっていたり、ギザギザしていたり、今まで見たことのない杖だ。
しかも、様々な武器の中からその杖にだけは値札が貼られていなかった。
疑問に思ったが、他に買えるような物も無かったので、ルシフェルはその杖を持ってレジへ急いだ。
レジに杖を差し出すと、
「……?こんなもの、うちに置いてたっけなぁ?」
杖を拾い上げて店長。
その店長はしばらく杖を観察すると、
「値札も貼られてないし、こんなの置いた覚えがなくて気味が悪いから、これ君にあげるよ」
そう言って店長は快く杖をルシフェルに渡す。
お金の無い彼にとっては願ってもないこと。
「あ、ありがとうございます!」
ルシフェルは杖を受け取り、勢いよく店を後にした。
「これで、これでやっと……金が手に入るぞ!」
そう喜んで汗だくになりながらも、ルシフェルはマッドベアの発見現場である近くの森へ向かった。
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