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すかさずその鋭い爪を振りかざさんと、ルシフェルに飛び掛かるマッドベア。
「う、うわあっ!」
とっさに、ルシフェルは手に持っていた杖をマッドベアに向かって振った。
(ああ、なんで杖なんてもらったんだろ……。無一文になったっていいから、もっとマシなものを……ってなんか時間経ちすぎじゃないか?)
そんなことを思っていると、ルシフェルの耳に入ってきたのは自分が切り裂かれる音ではなく、周囲にとどろくマッドベアの低い叫び声だった。
「ガァァァァアッ!」
「……えっ?」
目を向けて見てみると、マッドベアの右腕は見事に無くなっている。
同時に、その片腕が近くにぼとっと落ちてきた。
「一体何が……ってなんだこれ!?」
ふと自分の手元に目を配ると、握っていた杖がいつの間にか鋭利なナギナタに変わっていた。
マッドベアの右腕はこれによって斬り落とされたのだろう。
「えっ、えっ!?……あっ、そうだ。今のうちに!」
冷静になったルシフェルは杖のことは一旦置いて、再び目の前の猛獣に視線を戻す。
まだ右腕を斬り落とされた痛みに苦しんでいる。
「今度は間違えないぞ!お前の弱点は、これだ!」
そう言うと、ルシフェルは少しマッドベアから離れ、先ほど冷気を出した時と同じ構えを取った。
しかし、今度は彼を取り巻く空気が違う。
彼の手のひらに小さな光の玉が集まり出し、やがてそれらはこぶし大の光の球を作り出した。
「はぜろ!光魔法・シャイニングバースト!」
言った瞬間、その光球は大砲の弾のごとき勢いでマッドベアに向かって行った。
そしてその球がマッドベアに触れた瞬間、それは爆裂してマッドベアを攻撃した。
「よっしゃ!」
爆風にローブをなびかせながら勝利を確信するルシフェル。
爆撃を受けたマッドベアは、その衝撃でゆっくりと後ろに倒れていき、そして森の中で大の字になった。
どうやら完全に気絶したようだ。
「俺だってやればこれくらいできるんだ!」
自分に少しだけ自信を持てるようになったルシフェルが、倒れているマッドベアを捕らえようと近付いた。
その時、
「その力、そしてその杖。やはりノーハート様の情報に間違いは無かったみたいだな……」
どこからともなくそんな声が聞こえてきた。
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