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無機質な機械の音 点滴の薬液が細い血管に、流れ込んでいく。 呼吸器の管をつけられ、苦しそうに胸を上下させる幼い少女。 「クリス、クリス、死んじゃ駄目よ? 貴女は、この一族の当主になるんだから」 酷く甘ったるい猫なで声。 少女の小さな手を長い爪の手がつかむ。 クリスに、母と呼べる人はいたが 母と思えた人はいなかった。 自分を生かそうとするのは、自分を愛してるからじゃない 幼いながらも直感的にそう判断したのか、クリスは決して母に甘えることはなかった。 ただ、時折自分に会いに来てくれる兄を見るのが幸せだった。 兄が、自分に話してくれるお話しはどれも楽しく、その時だけは病の痛みを忘れられた。
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