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6歳になるころ、漸く病が落ち着きだした。 それでもまだ、学校へ行くことは愚か長時間出歩くことすらできない。 そんな時、新しい主治医が来た。 まだ若く、とても美しい医師だった。 否、医師というには随分影のある微笑みを浮かべる人だった。 「初めまして、オデイロンと言います」 細い白い指は、医師というよりはどこかしらか芸術家めいた繊細さを持っていて、義兄様を思い出させました。 柔らかい金色の髪に、深い海の底のような青い瞳。 一見優しそうに思える風貌なのに、その眼を見た瞬間いきなり谷底に、突き落とされるような不安をクリスは覚えた。 「クリス…と申します」 恐怖心を押し殺しながら呟くと、不意に暖かい感触がした。頭を撫でられている… 初めての感触だったが、決して嫌ではない… 寧ろ心地よささえ感じる。 暖かいその手に、すがりついて良いものだろうかと、クリスは頭の中で考えていた。
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