148人が本棚に入れています
本棚に追加
妹は、弱い体だったが必死に生きていた。
汚い物にまみれた世界を見つめながら、必死に綺麗な花を咲かせたいと。
妹にとって、兄は憧れだった。
何でも出来る天才で、とても優しくて、暖かな人で、月のように美しい人だった。
兄の弱さも脆さも知らず、勝手な幻想を当てはめていたが、何にも縋れない少女にとっては、そんな利己的な思想が生きる支えになった。
あの不気味な医師は、別に譜代の医師でもないのに甲斐甲斐しく世話を見てくれた。
少し風邪をこじらせただけで、一晩付ききりで病状を看ていたこともある。
医師と兄の存在は、少女にとっての光だった。
最初のコメントを投稿しよう!