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嫁にきた女は、酷く気の強い性格だった。 気に食わない事は、直ぐに怒鳴り散らし騒ぎ立てていた。 興味関心の類は、安っぽいことばかりでキリエが恋しかった。 だからといって、いくら恋しかろうとも妻を娶ったからには最早節操なく会えなかった。 しかし、妻相手に手を出すこともキリエへの罪悪感が強すぎて、全く出来なかった。 だが、妻が来てからしばらくして、キリエの体調が崩れた。 嘔吐や拒食、酷い腹痛に襲われたと聞いた。 しかし、それが妊娠であることはまだ分からなかった。 ただの精神的な悩みから起きたものだ、あの子は昔から余計な悩みばかり。 そんな冷たい声が蔓延ってキリエのことを侮辱した。 キリエは、それに対しても何を言うでも無く、ただ本当に申し訳なさそうな表情をし、俯きそっと書庫へと向かうだけだった。
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