148人が本棚に入れています
本棚に追加
恐らくは、キリエの腹を切り裂き子宮ごと取り出す可能性すら有り得る。
キリエは、生まれてくる子の命と自分の命のためにも、この事実をひた隠しにしていたのだ。
それならば、卑怯ではあるが私もそれを隠し、ただキリエを隠者のように支えられればそれでいい。
そう、その筈だった。
生まれてくる子がどんな子であれ、それは私たちの子で幸せになる権利があり、自由な可能性を秘めている。
はずだった。
4月8日の午前4時
母屋から一つのか細い産声と、どよめきが湧いた。
胎盤を被ったまま産まれて来た赤子は、うっすら金色の髪に混じり前髪に赤い毛が混じっていた。
母の出産に伴い出血で付着した色かとも思われたが、産湯で丹念に現れても、その髪は赤いままだった。
最初のコメントを投稿しよう!