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恐らくは、キリエの腹を切り裂き子宮ごと取り出す可能性すら有り得る。 キリエは、生まれてくる子の命と自分の命のためにも、この事実をひた隠しにしていたのだ。 それならば、卑怯ではあるが私もそれを隠し、ただキリエを隠者のように支えられればそれでいい。 そう、その筈だった。 生まれてくる子がどんな子であれ、それは私たちの子で幸せになる権利があり、自由な可能性を秘めている。 はずだった。 4月8日の午前4時 母屋から一つのか細い産声と、どよめきが湧いた。 胎盤を被ったまま産まれて来た赤子は、うっすら金色の髪に混じり前髪に赤い毛が混じっていた。 母の出産に伴い出血で付着した色かとも思われたが、産湯で丹念に現れても、その髪は赤いままだった。
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