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それからが騒ぎだった。 この子の父は、ロレンで この子は禁忌の子だ 殺してしまえ しかし、当主の証を持っている 身勝手な大人達の主義主張。 子を産んだ後、ぐったりしたキリエを前に産まれたばかりの赤子を巡る騒ぎが起きた。 何も分かってはいないだろうが、恐怖心からか赤子は泣き叫び、キリエから離れなかった。 「ロレン様!これはどういうこと!」 妻の厳しい叱責の声。 マスカラに縁取られた目がつり上がり、濃い香水の匂いにまた赤子は泣きわめいていた。 「私に手を出さなかったのはこういうことですの? こんな赤ん坊っ!」 真っ赤なルージュが大きく開くと同時に、キリエの腕の中の赤子を掴み窓から薔薇が咲く花壇に投げ落とそうとする。 静止画のような世界、反転した色彩、キリエの叫びと赤子の火が付いたような泣き声。 必死に下男たちが止めに入り、メイドたちが赤子を抱きかかえ事なきを得た。
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