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その髪は、不思議なことに他の髪と同じように生えているが、その一部分の髪だけは真っ赤になっている。 「今までに、例のないことです」 「一代に二人も…」 「ましてや、兄は不義の子!」 2人の子に2人の母、しかし父は1人。 妹の母は、斜陽とはいえ名家の子女。 兄の母は… 二人の父であり、次期当主のロレンの実の妹。 そんな事情もあってか、幼い息子を抱き締める母親の顔は、蒼白になっていた。 「全く、私のクリスが産まれたから良かったけれど、危うくこんな不義の子が当主になるところでしたのね!」 気の強そうな赤いルージュが、兄の母を罵る。 しかし、その女が誇らしげにしている妹は、命をこの世につなぎ止めるのが精一杯で、幾つもの管が刺さった細い体が痛々しかった。 「…ですが、この子は…ポールは、ロレン様の血を次ぐ第一子にございます!」 気の弱そうな母が、兄の方を優しく抱いたまま叫ぶ。 抱かれている少年は、意味は分からずともこれが恐ろしい会話と分かるのか、今にも泣きそうな顔で母にしがみついていた。
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