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そんな生活が3年ほど続いた頃、妻に子供が出来た。 誇らしげに、驕ったように笑っていた。 自分の腹を撫でながら浮かべる微笑は、産まれる子への愛や期待ではなく キリエに勝った あの不義の子を追い落とせるかもしれない! そんな歪んだ希望や、妬みを孕んでいた。 しかし、彼女の期待も虚しく生まれた子は酷く病弱な未熟児で… それこそ、産まれた直後から無菌状態の部屋にやられ、妻が娘を見れたのは一月も後になった。 小さく頼りない体、ミルクを飲み下すことも出来ず、点滴だけで育つはめになった… しかし、生まれて数ヶ月後にはその小さな命が騒動に巻き込まれた。 うっすら生えだした柔らかな金髪。 先のポールほど、豪奢な色ではないが柔らかな象牙色の髪。 その髪に、またあの赤い髪が混じっていたのだ。
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