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泣き叫び、必死に救いをポールに求める姿を見て、ポールの善意は痛むどころか笑いを浮かべさせた。
「言っただろ?もう飢えにも寒さにも苦しまないって」
死者を悼むでもなく、ポールは口元を歪めたまま吐き捨てた。
確かに、彼は嘘をついてはいなかったのだから。
「これもまた、死の恩恵というものだ」
笑いながら、体に無数の穴が空き血が流れ青ざめた死体を見下す。
いつ見ても、この死体というやつは美しくない。
そして、自分もいつかこの肉体が壊れこうなると思うと、背筋がゾワリと粟立った。
きっと、自分は今から20少しまでくらいが一番の時期。
花で言うならば咲き誇る時期。
しかし、その後は?
咲いた花が朽ち果てるように、自分もいつか萎れこんな醜い死体を晒すのか?
ましてや、その時自分の中にいるのは恐らくはクリスだ。
嫌だ、そんな醜い姿を…妹に見せるのは。
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