8/8
前へ
/183ページ
次へ
泣き叫び、必死に救いをポールに求める姿を見て、ポールの善意は痛むどころか笑いを浮かべさせた。 「言っただろ?もう飢えにも寒さにも苦しまないって」 死者を悼むでもなく、ポールは口元を歪めたまま吐き捨てた。 確かに、彼は嘘をついてはいなかったのだから。 「これもまた、死の恩恵というものだ」 笑いながら、体に無数の穴が空き血が流れ青ざめた死体を見下す。 いつ見ても、この死体というやつは美しくない。 そして、自分もいつかこの肉体が壊れこうなると思うと、背筋がゾワリと粟立った。 きっと、自分は今から20少しまでくらいが一番の時期。 花で言うならば咲き誇る時期。 しかし、その後は? 咲いた花が朽ち果てるように、自分もいつか萎れこんな醜い死体を晒すのか? ましてや、その時自分の中にいるのは恐らくはクリスだ。 嫌だ、そんな醜い姿を…妹に見せるのは。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

148人が本棚に入れています
本棚に追加