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まだ、たった5歳になったばかりなのに兄・ポールの方は、類い希な美貌と多方面に枝を伸ばす才能の片鱗を見せていたため、大人たちも簡単にポールを処分出来なかった。
逆に、家柄も素晴らしく表に出して一切疚しくない妹・クリスの方は、生まれつき体が弱く一歳になったのに、まだベッドから動くこともままならなかった。
どちらをとっても、家名に暗い影が落ちるのは明確だった。
「そもそもクリス様は20歳まで生きられるのか?」
「しかし、ポール様を当主になど…」
一族の大人たちが、勝手奔放にザワザワと騒ぐ。
その中、たった一人黙っていた長老が口を開いた。
「二人を、一つにせよ…」
静かに、重く響いた声。
意味が分からない言葉だったはずだが、周囲には全て理解が済んだらしい。
その残酷過ぎる決断に、親戚は愚か2人の母も父も押し黙ったまま、俯いていた。
「この二人を育て、クリスが20歳になり尚且つ体が虚弱なままであれば」
ポールを殺し、ソレを器にしクリスを生かす。
脳の移植による融合という、なんともおぞましい物だ。
だが、半神を一つにするための唯一の手段だった。
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