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ボクが5歳の誕生日を迎えた4月8日から、2回月が満ち欠けし雨の多い月になった。
この月を極東の島国では、水無月と呼ぶのだから不思議なものだ。
ボクは、この2度の月の変身のうちに様々なことを吸収した。
それは、勉強でも芸術でも遊びでも同じだった。
ボクの成績や評価が高いほど、お母様は泣きそうな表情で笑う。
ボクの成績や評価が高いほど、周りの大人たちは難しい表情を浮かべた。
それは、ボクには難しくてよく分からないことだったけど、お母様が喜んでくれていたなら、まあそれでいいかなんて思ってしまう。
義妹のクリスは、ボクがあいにいくと嬉しそうに笑いながら手を伸ばす。
点滴のチューブが手の甲に刺され、手は血の気を失ったように真っ白で冷たく、ボクが両手で包み込むと真っ赤になった。
こんなに、小さいのに頑張ってて偉いと思う。
ボクもクリスに負けないくらい、強くならなきゃいけないと思った。
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