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じっとりと、シャツが肌に吸い付いてくる。
屋根を砕くような激しい雨の日。
お母様は死んだ。
正確に記すなら、殺されたと言うべきだろうか。
まだ20そこそこのはずなのに、その金髪には白髪が混じっていた。
ボクは、葬列に参加することすら許されなかった。
母屋の一室に、閉じ込められたままだった。
少し高い窓を、椅子にのっかり眺めた外は…
小さな蟻のような喪服の列。
頭が酷く痛む、まるで脳が増長していくようだ。
気付くと、ボクは自分の部屋にいた。
椅子から落ちたときにぶつけたのか、頭には包帯がまかれていた。
何時もなら、起き上がればお母様があの泣きそうな優しい笑顔でボクを抱きしめてくれていたのに。
今、ボクを包むのは憎らしいほどに清潔で冷たいシーツ。
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