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罪悪感なんてない
ただ、手や服についた赤い染みに興奮を覚えていた。
倒れているメイドも、別に嫌いなわけじゃなかった。
首を深々と斬られ、絶命した瞬間彼女はこう叫びたかったはずだ
何故?と
理由なんてどうでも良かった。
ただ、この湧き上がる渇きを癒やすためならば
血を美しいものだとは、思わなかった。
ましてや悲鳴の形に開かれた口や、恐怖に歪んだ顔…そのどれをとっても、彼には美しいと思えなかった。
しかし、この少年はたった一つ…美しいと感じてしまった。
死にゆく寸前、生きたいと強く煌めく生命の灯を
柔らかく長い金髪は、雨と血を吸い取り随分重かった。
かなりの時間ここにいたのだから、当然だがポールの体温はすっかりと雨と大地に奪われていた。
ナイフを捨てクルリと背を向けると、バシャバシャと水たまりを踏みつけながら、少年は屋敷に戻りそのまま眠りについた。
翌朝、死体を見つけた使用人の悲鳴が屋敷に響き渡っていた。
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