矢印は一直線

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「そんなわけないじゃん。それより寝なよ。明日起きれないよ?」 あたしはまっすぐ前を見ながら言った。 見つめられたら本音を言ってしまいそうで前を見てるしかなかった。 そうしたら、いきなりぐんと手を引っ張られて竜と目が合った。 「なに?」 「奈緒が泣いてるような気がしたんだけど…気のせいみたい。」 竜が鋭くて、ドキッとした。 だけど、ここで顔に出すほどあたしは馬鹿じゃない。 「気のせいに決まってるじゃん。まず、あたしが泣く理由がないもん」 「まぁ…そうだね」 あたしはずるいね。 こうやって遠回しに竜を追い詰めるんだから。 「目、覚めちゃった。もう少ししたらあたしは寝るから寝てていいよ」 あたしはそう言ってゆっくり前を向いた。 「わかった。おやすみ」 竜はそう言うとまた目を閉じたようだ。 あたしの手を握りながら。 こんな時間に起きちゃったらきっと今日も遅刻だ。 もちろん竜のせいで。 遅刻ギリギリでHRに間に合うか間に合わないか… こんなんじゃ付き合ってるのバレバレで言ったわけじゃないけど、みんな気づいてる。 遅刻するたび竜は悲しそうな顔するよね。 遅刻だからとかじゃなくて……あの娘、見てるもんね。 バカみたい。嫌ならはやく起きるなり、あたしと別々に家出ればいいのに。 「本当、バカみたい。」 だけど、きっともう少し。 もう少しでこの関係も終わり。 竜が幸せになる相手はあたしじゃないの。 竜はきっと言うんでしょ? あの娘と付き合うことにしたからって。 あたしのこと本当は好きじゃなかった。ごめん。って。 そうなったら、あたし言ってやるわ。 そんなの知ってた。って。 そして、あなたがいない寂しさを抱いて独り泣くのよ。 ただ、それだけ。 本当にそれだけ。 「本当にバカだよ」 本当にバカなのはそこまでわかってて、あなたと繋いだ手を解けないでいるあたしだ。 。
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