矢印が揺れる

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奈緒と俺が付き合い出したのは一ヶ月前のことだ。 奈緒が俺に告白してきた。 俺は奈緒と付き合うことにしたんだ。 彼女に同情してって自分に理由つけてるけど本当は誰かに愛されたかっただけなんだ。 ただ、自分を支えてくれる人が欲しかった。 今、思えばスゴく酷いことをしたと思う。 それでも、別れたいとは思わなかった。 奈緒が俺の支えだから。 奈緒は俺に必要な存在だ。 それがどんなポジションでも。 俺はゆっくりと立ち上がり廊下に出た。 だが、教室を出てすぐに俺は立ち止まってしまった。 「……あれ?」 俺は思わず疑問の声を出した。 目線の先では奈緒が楽しそうに笑ってる。 なぜだろう?なぜこんなに俺は驚いているのだろうか。 俺はゆっくりと奈緒の一ヶ月の顔を思い出してみる。 理由はすぐにわかった。 奈緒の笑顔がここ一ヶ月の記憶に見当たらないのだ。 全くだ。全くといっていいほど俺の記憶には奈緒の笑顔がなかった。 一ヶ月前、付き合う前には奈緒はよく笑っていたのに… 奈緒は俺の前では笑わない? 「竜くん?何してんの?」 そんな疑問が出たときだった。 俺の傍で俺の名前を呼ぶ可愛いらしい声がしたのだ。 「え?美砂?」 目の前にいるのは小柄で可愛いらしい俺が好きな人だった。 俺は思わずびっくりしてしまう。 当然だ。俺の目の前で好きな人が俺を見上げているのだから。 「ちょっと考えごと。」 凄く心臓が煩い。 俺は少し落ち着こうと美砂に気づかれないように深呼吸した。 「そうなんだ?だけど廊下の真ん中はやめたほうがいいと思うな。」 そこでハッとした。 俺は廊下の真ん中でどれくらい立っていたのだろうか。 恥ずかしい。 だけど、それよりもこれは絶好のチャンスだ。 俺は意を決して言った。 。
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