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──3週間前
ここから飛べば、楽になれる…。
難しくない。この足を一歩踏み出すだけだもの。
「なんだ、飛ぶのかぁ?」
不意に声をかけられ、ビクッとして落ちそうになった。
手摺に掴まり声の方を見ると、見知らぬ男が立っていた。
「誰よ、あんた」
「俺?佐伯和弥23歳独身。このマンションの住人だよー。初めまして」
何だこいつ。
一体何しに来たんだろう?
「そんで?飛び降りるの?」
「…そうよ」
「んじゃさぁ。飛ぶ前に俺と話しようよ。どうせ死ぬつもりなら、それからでも遅くないだろ?」
「どうしてあんたと話さなきゃいけないのよ?」
「可愛い女の子に声かけただけだけど?ほら、そんな所じゃ話しにくいからこっち来て」
…変な奴。
しかし、さっきまでの「死のう」とした気持ちが失せた。
なんだかんだで止められたのかな…。
気乗りしない事をしても仕方ないので、私はこの男の言葉に従った。
「お?素直じゃん。まぁ、座ったら?」
まるで自分の家にいる様に笑って言いのける。…やっぱりこいつ変だ。
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