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「おフサ。君にも協力してもらうことになるが、構わないな」
本当なら足の手当てをしてやりたいところだが、そうも言っていられなくなった。幸いおフサが微笑んでくれたのでほっとする。
だがこれはおフサにとってもいいことだ。部屋で子供を預かるようになれば自然長屋にも早く馴染め、人のなんたるかも早くわかるだろう。人として生きることにも繋がろうというものだ。
無償で借りた部屋で吉兵衛が貰ってくる古くなった算盤や書道具、それに貸し本屋に都合してもらった書で預かった子供に教育する。人の暮らしが支え合いによって成り立っていることを示すにはここはうってつけに違いない。
自前のものがなにひとつないことに気付かれればおフサに幻滅されるかもしれないとわずかに不安を覚え、密かにひとり苦笑した。
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