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それからふたりで色々なことを話した。ほとんどは人の暮らし振りに関してのことで、答えてばかりだったが、問われて初めて気づくこともありまったく退屈はしなかった。
そのまま言葉を交わして眠気が来るのを待ち、ついには朝を迎えた。寝不足の顔を長屋の連中に誤解されても、訂正しようという気は起こらなかった。
平安の時代に書かれたという記録“日本霊異気”の中にある話のひとつ。言ってしまえば古い古い昔話だ。
それ以前には野干(やかん)と呼ばれていた狐が、人に化け男と暮らし人の子を産み落とした。しかしある時犬によって正体を見破られ、逃げ去る狐に男が呼びかけた中の“来つ寝”が狐の名の由来になったと書かれている。
いつでも来て泊まっていけ、ということだとされているその意を好きにするように話した中に見つけたのだろうおフサに、それを指摘してまで否定してやろうというつもりは、実を言うとさらさらなかった。
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