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表を歩きながら、時々後ろのおフサを気にして振り返る。
あまり大っぴらにあれがなにでこれがなにでと説明しては恥をかかせてしまうのではないかと気にかかり、そうしてやれない。
気にかかることがあればあとでまとめて聞くことにしよう。
賑やかな方を選んで歩いていると、縁台を用いて町人が将棋に興じている大辻で急におフサが横へ追いついてきて真剣な顔で私を見た。
思わず足が止まる。
「この先は、行けませぬ」
どうということのない通りで、今も別段変わったところも見つからず往来も滞りない。
しかし何分神通力を備えた狐の言うことなので黙って従うことにした。
こちらも質問はあとでまとめてすることにしよう。
私が体の向きを変えるとおフサは力の抜けた様子で胸を撫で下ろした。
困ったことになった。
変えた行き先も賑やかなことは賑やかなのだが、おフサを連れて行くにはいささか問題のある地区になる。女郎街、いわゆる色町だ。
町並を見せて周っているのだから急にわき道へ反れるのも不自然で、理由を説明するのもはばかられる。
はたして人のそうしたことまでおフサの理解が及んでいるかも不確かだ。
悩んでいるうちに、大門へ着いてしまった。
女連れで通ろうとすれば番に声をかけられることは間違いない。
急に後ろ向きになった私におフサは目を丸くしたが、私は気にせずにその横を過ぎ去った。
後ろで声をかけたがっている気配を感じながら、そのまま長屋まで帰る。
その間どう説明すればいいか考えるのに必死だった。
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