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―朝焼けの街に風切り音が響く。
少年の乗った1台のバイクが、摩天楼の間を走っている。
バイクはしばらく走り、建ち並ぶビルの間から開けた広場に出て、止まった。
中央に時計台がある広場には人っ子一人おらず、時計が時を刻む音以外は不気味な程の静けさに包まれている。
「…時間より早く着いちまったな…」
バイクに跨ったまま、少年は呟いた。
紅と金のツートンヘアに深紅の瞳、カーゴズボンとロゴ入りのシャツを纏いライダースジャケットを羽織るこの少年の名は 神木 遊護(かみき ゆうご)。
彼は今日からこの街、羽頭流(パズル)町で開かれるカードゲーム「遊戯王5D'sデュエルモンスターズ」の大会に参加するため、ここに訪れたのである。
「開始時間は9時か…それまで時間あるな…」
遊護はその手に填めているデジタル式の腕時計を睨む。
「…そうだ。朝飯買っておくか…」
ふと思い出したように呟いた遊護は、再びバイクのエンジンをかけ来た道を引き返していった。
「いらっしゃいませ~。」
コンビニの前にバイクを止めた遊護は、バイク後部に積んであるリュックを掴んで店に踏み入った。
店員が商品の陳列をしながら言葉をかけて来る。
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