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遊護は弁当を一つ手に取りレジへと向かう。
店員―遊護と同年代と思われる黒髪の少女は素早くレジへと移動し、レジ打ちを始めた。
遊護はリュックを漁り財布を探している。
「525円になります」
少女が値段を読み上げると同時に遊護は財布を引っ張り出した。
が、その拍子にリュックの中に入れておいたカードの束をカウンターにバラまいてしまう。
「…おわぁ!」
遊護は足元に落ちたカードを慌てて拾い集める。
「…」
少女も遊護と同じように己の足元に落ちたカードを拾い出す。
「いやーゴメンゴメン。ありがとな。」
遊護はカードを全て拾うと体を戻した。
「…ぁ」
「助かったよ、サンキュー!」
少女は何か言いかけるが、カードを受け取り礼を言う遊護の言葉にかき消された。
「…525円になります」
「ほい、ちょうどね。」
遊護は小銭を渡し会計を済ませると、意気揚々と店を出て行く。
「ありがとうございました。」
去ってゆく遊護の背を見据えながら、少女は僅かに笑みをこぼした。
店を後にした遊護は再び広場に戻った。
先ほどとは違い、まばらにだが人影が窺える。
特に他へ行くあてもない遊護は、ここで大会開始を待つことにした。
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