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そのまま駆け足でひっぱられ前へ上へ。
「しょう・・」
その間何度も声かけるも、今日はバイト疲れたやら炊飯器の蒸気口でヤケドしたのが私のせいだとやらがなりたて、そのままよくわからない鼻歌なんぞを歌って聴きやしない。
ウチと同じドアをばたんばたーんと音を立てとまった。
彼女の、女のわりにずいぶん殺風景な部屋。
そして派手な顔のわりに、ずいぶん古風な家庭料理はもうテーブルに並んでいる。
「さ 二人分つくっちゃったんだから食べてよ」
ここまで来てやっと第一声。
「醤油は?」
「何アンタなんで持ってこなかったのよ?」
「左の頬をおぶちましょうか?」
と喉まででかかったが白味噌にはかなわぬ。
すごすごと三階分足下り、きぃぃぃーと弱々しく古鉄ドアをきしませ、全く手のつけられていない綺麗なキッチンから醤油を手に取った。
ベッドの下に目をやると、先程まで愛読していたブンコ本が なさけないカタチをしてひしゃげていた。
「何もわからん・・か」
醤油片手に考えごとをしていたら、出会い頭のイケメン兄ちゃんに笑われた。
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