171人が本棚に入れています
本棚に追加
それは黒い身体をしていた。
いや、身体というと語弊があるかもしれない。
大きさは目の前に立っている少年の5分の1程度しかなかった。
形は正確に言い表す事は出来ない。
何故なら、弾力性のありそうなテカっている身体をウネウネと形状変化させているからだ。
それほど急激な変化をしているわけでもないが、真っ黒な物体がそのようにしているのは不気味としか言い様がない。
その時、異形のそれの変化が止まったかと思うと突然少年に飛び掛かった。
「おぉっと!」
少年は顔面に向かってきたそれを、身体を反転させて避ける。
だが、完全に避けたと思われたのに少年の右頬に線がはしった。
少量の血が、飛ぶ。
「痛ッ!」
いつの間にか異形のそれは、まるで自身から短剣を生やしているかのように身体を変化させていた。
少年を傷付けたところを見ると、その部分は硬質化しているようだ。
先程から響いていた金属音はこの少年と異形の戦闘音だったのだろうか。
だが、少年の傷は浅い。
それが地面に着地する前に手に持つ剣を振るった。
「ハッ!!」
その一閃は異形のそれを両断した。
最初のコメントを投稿しよう!