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「…………人間?」
『そうだ…』
博雅は屋根の上にいる赤い狩衣の少年を見上げては瞬きを繰り返した。
「ぅ、嘘だろ晴明?
人を喰らい、その皮を被るやつが人間なわけ…」
〔嘘デハナイサ(笑)
俺ハ今カラ約100年前、コノ地ニ産マレタ…〕
絶鬼はゆっくりと自分の生い立ちを語り始めた。
絶鬼はなんともないかのように淡々と話していたがその声には悲痛な叫びが博雅には感じられた。
まるで自分の苦しみをわかって欲しいかのように…
今は昔、
京の都から山一つ分越えた小さな村に一人の男児が産声をあげた…
雷鳴が轟く嵐の夜であった。
その村は小さくとも水や天候に恵まれ作物もよく育ち村人達は貧しいながらも何不自由なく暮らしていた。
男児の母であろう女は我が子を愛しそうに腕に抱いた。
「この子の名前は絶幸(たえゆき)…
この子の幸せがけして絶えないように…」
女が幸せそうに笑った時、空に雷鳴が轟き赤子を照らす。
「ひっ!!
ぁ、あぁ……嫌ァァァァァ!!!!」
雷に照らされた我が子の瞳を見た瞬間、女は赤子を手放し意識を失った…
男児の瞳は雷のような金色だった…
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