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とある魔界のとある魔王様のお城の一室に、本来は魔に属する者しかいないはずのこの場所で何故か人間が、しかもまだ12~3歳の男の子が本を読んでいた。
テーブルの上には3冊の本が放射状に置かれており、その3冊を同時に読んでいるらしい彼の手はひっきりなしにページをめくっている。
そんな彼の前にはテーブルを挟んで座る見目麗しい女性が一人、何をするでもなく座っていた。
均整のとれた身体に腰までのびたやや紫がかった髪、長い睫毛に縁取られた瞳は色に黒真珠のような深みがある。
見た目は20代半ばといったこの絶世の美人である彼女こそ、魔界をしきる魔王様その人なのだが…。
先程何をするでもなく、と言ったが訂正せねばなるまい。
何故なら。
「なぁ、リツ」
「なんだよ?」
「結婚式はどこがいい?」
「……まずお前は頭のネジを閉めてからモノを言え」
頬を染めながら、かまってくれと必死に目線で訴えていたのだから。
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