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剣術指南開始から数日が数週間たった頃、オレも少しは木刀を扱えるようになっていた。
開始当時は、刀を振った時の軌道がヘロヘロだったが、今ではしっかりとしている。
凪ぎ払った時、物に当てる事で精一杯だったソレは、今では確実にダメージを与えられる。
練習効果を実感し、オレは自分でも感心していた。
そんなある日……
『今日で、指南は終わりだ……』
師は突然言った。
唐突な指南の終わり。
『でも、剣術はまだ完成していないぞ』
ここまでやっといて、途中で終わるなど後味が悪い……オレは食い下がる。
『道場だけで練習して、完成させようと想うな。道場で出来るのは、精々見映えの良さくらいだ』
そう言って、オレの肩を叩く。
『それに、お前さんには、やらなきゃならん事があるだろう?』
忘れかけていた。
次の目的地に宛てもなく、腕も未熟だと知ったからには、腕を磨く事だけを考えて、修行に励んだ。
それが……終わる?
そんなオレに、師は言い放つ。
『お前がやらなくとも、他の国の勇者がやる事だろう。だがな、お前は国が認めた勇者なのだぞ』
(認めらたくて、認められた訳じゃない…)
『お前さんがどんな考えで旅をしようと勝手だが、今のお前さんに教えられる事は、もうほとんどない。今日で最後だ、ライウン』
今のオレに……という事は、最初から全てを教えるつもりなど無かったのだろう。
『オレの剣術は我流だ。この剣術はお前さんに伝えられたが、お前さん自身も我流として取り入れて構わんさ。全てをお前さんに託そうと想う』
師はそう話すと、刀を抜き放った。
彼独特の構えをとる。
腰を少しだけ静め、深呼吸をした。
そして……。
師は風になる。
そして、次に視界に入った時には、数m先にいた。
樹のモンスターを一撃で倒した、あの技だ。
概念は、素早く斬り込み、尚且つ気配や殺気を風に変え、威力を倍増する。
だが、変えられて出るのは風だけではない。
かまいたち。
斬れる風だ。
彼の目の前にあった数本の木刀が、完全に切れて、真っ二つになっている。
『技の名は無い。この無名の技を、お前さんに託す事を、最後の指南とする』
師は、壁に掛けられた刀の一本をとる。
『少し速いが、指南合格の証だ。今日はコイツを使え。これからしばらくは厄介になるだろうから、大切に使えよ』
刀を受け取る。
『さぁ、始めるぞ』
そうしてオレは、最後の指南を無事に終えた。
再び旅立つ事になる。
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