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怪しく光る刃が、オレを捉える。
じりじりと、お互いが距離を詰めていく。
開始の合図は無い。
すでに、始まっているのだから。
『どうした? こないのか? そちらが来ないのなら、こちらから行くぞ』
男が余裕の笑みを浮かべる。
(挑発、か……?)
とある剣士は、果たし合いにわざと遅れ、頭に血の昇った相手をさらに挑発し、怒り狂って隙ができたところをついて勝利を果たしたらしい。
伝説は、時には役に立ち、時には眉唾だけで終わる。
オレが今、挑発に乗ったのならば、怒り狂って剣士と同じ運命を辿るのだろうか?
生憎だが……
(オレは、ここで負ける訳には行かないんだ……!)
男が剣を振り上げる。
『どらぁぁぁあ!』
突進しながらの突き出し。
オレは慌てて横に逃げる。
そして、オレを追っての凪ぎ払い。
刀で受ける。
(つぅっ……)
勢いを殺しきれず、顔の数ミリ手前まで剣が流れてくる。
髪の毛が数本、切れて落ちた。
バックで宙返りをし、距離をとる。
男は余裕の笑みを崩さない。
(今度はこっちの番だ!)
オレは刀を握り直すと、男の懐へ突っ込んだ。
右腰から左肩にかけての袈裟斬り。
だが、相手は軽々と受け止める。
一旦刀を引き、流れるような動作で、今度は左腰へ叩き込む。
だが、それも軽々と受け止められる。
瞬時に体を回転、脛を狙って蹴る。
しかし、それが当るよりも早く、男は距離をとっていた。
『悪くない……。悪くないが、貴様の術には踏み込みが無い。どんな術を使っても、簡単に受け止められる』
男の冷静な解析に、オレはゾッとする。
必死に攻撃を繰り出したにも関わらず、相手には蚊ほどのダメージも与えられない。
余裕な姿勢を崩す事すら出来ない。
『そして尚且つ、無駄な動きや力の入れ方がわかってないせいで、本来の力が発揮できず、無駄に疲れる』
男は鞘に剣を納める。
『良いだろう、ヤツの依頼を受けてやる。私のやり方で貴様を鍛えてやろう』
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